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Mariko Asano

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褒められるために描きはじめた絵

 物心ついた頃には毎日のように絵を描いていた。周囲の大人たちは「上手」と賛辞を贈ってくれ、それが嬉しくて褒められたいがために絵を描き続けた。小学校になると少年漫画とアニメにハマり、中学・高校では必然的に美術部に所属。部活動のほとんどは漫画やキャラクターを描いて過ごした。

高校卒業後も絵を描きたいと尾道市立大学に進学。油絵を専攻するも、友人たちとともに漫画に没頭。少女漫画の面白さにも気づき、描き続けたおかげか画力も上がった。しかしストーリーを考えるのはどうにも苦手で、ついつい長編になりがち。描き始めるも途中で力尽きてしまうことも度々だった。大学3年、友人原作の作品で作画を担当し、初めて1本の漫画を描き上げた。

この頃は決して“漫画家”を目指していたわけではない。ただ「楽しいから描く」だけだった。

“漫画家”が夢に

 大学を卒業。就職はしなかった。元来、あまり人付き合いが得意ではなく、企業に勤める気はさらさらなかった。「これから何をしようかな」。夢があったわけではないけれど、漠然と「縛られる」ことは望んでいなかった。そんな折、大学時代の友人の一言で霧が晴れた。

「絵うまいんだから、漫画家になれば?」

 

「無理だよ」なんて言葉が口をついて出ることはなく、「そうしようかな」。何となくかもしれないけれど、“漫画家”が夢になった日だった。

 

日の目を見るまで

 漫画家を目指そうと思っていたこの頃、地元のオシャレなカフェに友人と赴く。何度か来たことがあったVulcaCafe。オーナーの廣畑さんとの会話の流れで、仕事の話に。今は何もしておらず、何をしようか模索していることを告げると、「うちで働く?」。

 漫画に力を注ぎたいけれど、生活のためにはどうするかと考えていた矢先の提案に、「はい」と即答。VulcaCafeの仲間入りを決めた。

 それからは融通を効かせてもらいつつ、漫画を主軸にしつつカフェで働く日々。カフェは人間観察にはぴったりで、コーヒーカップの持ち方1つをとっても、お客1人1人によって違い、「こういう持ち方をするキャラクターを出してみようかな」と漫画へのヒントを与えてくれる。

 漫画を出版社に持ち込んだり、コンテストなど投稿したりしていると、少女漫画の出版社「白泉社」のコンテストでフレッシュデビュー賞に輝いた。不思議な力を持つ少年が自分の前世と現世のズレに苦悩するファンタジー作品「かなめ」で、2019年2月、「LaLa」からデビュー。漫画家への第一歩を踏み出した。

「まだまだ卵」

 デビュー以降、何度か読み切りが掲載された。しかしストーリー作りは未だに苦手なまま。作画の話は来るものの、どちらもこなしている同じ雑誌の仲間を思い、“焦り” が心に生まれ、漫画のことをひたすらに考えるほかなくなる。

けれど、そんな生活に外の空気を与えてくれるのがVulcaCafeで働く時間。苦手だった人付き合いも、接客やスタッフ間のやりとりの中で学び、人としての成長をちょっとずつ実感できている。

 人としても、漫画としてもまだまだ卵。自分の絵がどこまで通用するかなんてわからないけれど、「誰かの心に刺さる作品」を目指して今日も一コマ一コマを描く。

 今の目標は「10巻以上の連載作品」を創り出すこと。その日を夢見て、今日もこの生まれ育ったまちから、物語を都会へと送り出している。

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